1. 1) martial artsという用語は中国武術と日本武藝の直訳である.それは戦闘の身体的要素に戦略,哲学,伝統などを融合させたシステムであると考えられている.Green, T. and Svinth, J. Editors. (2010) Martial Arts of the World. ABC-CLIO. p.xix, p.89.
2. 2) 套路は,中国武術の主な表現形式で,左右前後の移動の中で組み合わせた攻撃と防御技をセットとして繰り返す練習形式である.
3. 3) 本稿の武術とは,「戈を止むるを武と為す」に基づく武の術や武術の道を指す.特定の対象を指示する場合,中国武術(wushu),日本武道(budo:柔道judo,空手karateなど),東洋武術(中国武術に代表される東洋社会に生まれ,東洋の知恵に富んだ武術の総称)をそれぞれの文脈に応じて用いる.
4. 4) martial artsに対する理解と,Martial Arts of the Worldの中で地域別に整理された世界各地の戦闘技術を踏まえれば,武術は世界中に存在すると言える.ただ,武に対する理解や武術の形式,実質の違いによって,それらの有り様が異なるのである.Green, T. and Svinth, J. Editors. (2010) pp.ⅴ-ⅸ.
5. 5) 人間同士の戦いだけでなく,遠古の「人と獣の戦い」の狩猟活動も武術の発生と形成に重要な役割を果たしたと考えられている.林伯原(2015)中国武術史.技藝社,pp.9-13.