1. 1)重森三玲(1936-39):日本庭園史図鑑:有光社 引用にあたっては常用漢字に置き換えた。
2. 2)重森三玲.重森完途(1971-76):日本庭園史大系:社会思想社
3. 3)本稿で「雪舟作庭」とは重森の理解を含めた引用を表す。重森が「雪舟作庭」の論拠とするのは大きく文献研究からの蓋然性,本稿で検討する「絵画的」特徴である。また「建築でも庭園でも,一つの時代に於いて,傑出せるものを残すほどの人はきわめて少ないのであるから,たまに残された庭園というのは,その多くは当時の天才家達の限られた人数による作品である場合が多いのである。」(前掲1,第3巻下,48)ともしている。
4. Shigemori Mirei's View on "Picturesque Garden Layout by Sesshu"
5. 5)『図鑑』は重森の単著であるが,『大系』では共著者に重森完途(1923-92,以下完途)をむかえ,あらたな実測調査や文献研究による大改訂が施されている。執筆分担は明記されているため,本稿では重森による記述のみを対象とする。完途は『大系』において雪舟による石組の特徴を「絵画的感覚」と呼んでまとめている(前掲2,第7巻,53-54)。内容を確認しておくとまず室町末期の影響を受けたものとして,1:「中心石の石組から向かって右辺に斜線で石の線が流れて,それがそのまま渦を巻いたようになって,天に飛翔してゆく力強い石組の構成」とされ,引き続き「雪舟だけにしか見られない特徴」として2:「石を垂直に構成しているところ」,3:2からくる「重ねかけるような石の組み方」,4:「長い石を護岸石組に使っていること」の 3 点が挙げられる。さらに,「室町末期の時代風潮にのりながら,やはり,雪舟の作庭における大きい特徴」として5:「滝石組において,水分石近くに斜線で鋭く一石入れているところ」,6:「山畔の築山石組も,巨石を扱わないで,絵画的な遠近法を用いていること」,7:「亀島の中央石が立石で構成されているところ」の 3 点,合計 7 点である。これらの指摘は『大系』刊行以前の完途による論文(重森完途(1966):雪舟の庭-真贋:芸術新潮 17(8),56-65)や当時の状況を検討すると,重森の理解のトレースではなく,完途独自の観点によると考えられるため,本稿では扱わない。