Affiliation:
1. 大阪府済生会千里病院千里救命救急センター(Senri Critical Care Medical Center, Osaka Saiseikai Senri Hospital)
Abstract
要旨急性壊死性脳症(acute necrotizing encephalopathy: ANE)は,急速に進行する神経症状を特徴とするウイルス感染の稀な中枢神経系合併症であり,典型的には小児に発症する重篤な急性脳症の一種である。COVID–19もANEを起こすことが知られているが,本邦では小児例が散見されるが,成人例においては未だ報告がない。今回我々は,成人に発症したCOVID–19関連のANEの1例を経験したので報告する。症例はとくに既往のない73歳の男性。入浴中に意識レベルが低下しているのを発見され,当院に搬送された。来院時,意識障害,高体温,頻脈を認めた。SARS–CoV–2抗原検査は陽性であったが,血液および髄液検査,頭部CT所見からは意識障害の原因となるような所見はなく,重症熱中症と診断しICU入室となった。入室後より臓器障害が進行し,播種性血管内凝固症候群となったため,最重症型の熱中症を疑い集中治療を行った。意識障害が遷延したため,第6病日に頭部MRIを施行したところ,ANEに特徴的な画像所見を認め,ANEと確定診断した。免疫抑制療法を施行せずICUを生存退室し,その後意識障害も改善した。COVID–19関連のANEは世界的にも症例数が少なく未知な部分が多いが,臨床データや経過は熱中症に類似する点が多いため注意が必要である。