幻視や幻聴，姿勢保持障害など精神病症状を主訴に来院した慢性硬膜下血腫の1例(Chronic subdural hematoma presenting with psychotic symptoms such as visual and auditory hallucinations, and postural instability: a case report)

Abstract

要旨慢性硬膜下血腫は意識障害や認知機能障害，対側の運動麻痺，頭痛や嘔吐など多彩な症状を呈し，ときに迅速な診断に難渋する。我々は初発症状として幻視や幻聴を訴えた慢性硬膜下血腫の症例を経験したのでここに報告する。症例は68歳の女性。来院1か月前からとくに誘因なく，「悪魔が出てトイレに行けない」「いつも音楽が聞こえる」といった幻視や幻聴が出現，来院前日に幻視や幻聴の症状が増悪し，姿勢に関係なく常に体が左に傾くようになったため，当院救急部を受診した。来院時，意識はほぼ清明であり，呼吸循環動態は安定していた。頭部CT検査で，右前頭部優位に硬膜下血腫を認め，左方への正中偏位を伴っていた。右慢性硬膜下血腫と診断し，翌日穿頭血腫洗浄術を施行した。その後，幻視や幻聴および体幹の傾きは消失し，主訴の改善を認めたため自宅退院した。