Affiliation:
1. ジャパンメディカルアライアンス海老名総合病院救命救急センター救急科(Emergency Department of Emergency and Critical Care Center, Japan Medical Alliance Ebina General Hospital)
Abstract
要旨Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群を来す疾患である。今回我々は,肥大型心筋症にKounis症候群を合併した症例を経験したため報告する。症例は45歳の女性。抗菌薬を初回内服後,皮膚の掻痒感と呼吸困難感を自覚し救急搬送された。来院時橈骨動脈の触知微弱であり,全身皮膚紅潮と膨疹を認め,アナフィラキシーショックと診断しアドレナリン0.3mgを計2回大腿外側に筋肉注射した。また,心電図でII,III,aVF,V1–V5のSTおよび心筋逸脱酵素の上昇,心エコーで心尖部心室瘤を認めた。来院後30分間程度ショックが遷延したが,次第に安定した。急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影検査を施行したが両側冠動脈に有意狭窄は認めず,Kounis症候群タイプIと診断した。また,心臓造影MRI検査で左心室中部の心筋壁が肥厚しており,心尖部心室瘤を有する心室中部閉塞性肥大型心筋症と診断し,肥大型心筋症へのアドレナリン投与がショックの遷延に影響したと考えられた。アナフィラキシーショックの初期治療後もショックが遷延した場合は迅速に心電図,心エコーを実施し,Kounis症候群や既存心疾患の病態増悪を鑑別に挙げる必要がある。また,Kounis症候群に心室中部閉塞性肥大型心筋症などの心疾患を合併した場合は,薬物治療の選択に注意が必要である。