Affiliation:
1. 埼玉医科大学国際医療センター救命救急科(Department of Critical Care and Emergency, Saitama Medical University International Medical Center)
Abstract
要旨 原因不明の血栓性微小血管症で死亡し,病理解剖でサイトメガロウイルス感染症と診断された1例を報告する。71歳の女性。意識障害で当院に搬送された。来院時より意識障害,ショックが遷延しており,多量の暗赤色水様便を認めた。体幹部CTで右鼠径部リンパ節腫脹,小腸の造影増強が見られたが診断に至らなかった。第2病日に破砕赤血球,血小板減少,肝機能障害,腎機能障害が出現し,原因不明の血栓性微小血管症と診断した。対症療法として持続的腎代替療法および輸血,抗菌薬を継続したが暗赤色水様便は持続した。サイトメガロウイルス抗原は陰性であった。第27病日に腸炎の精査目的に施行した大腸内視鏡検査で回盲部から上行結腸にかけてびらんと白苔が見られたが病理組織でも確定診断に至らず,第48病日に死亡退院した。死後の病理解剖で肺と胃,上行結腸,膵臓にサイトメガロウイルス感染症の所見が判明し,サイトメガロウイルス感染症に伴う血栓性微小血管症および多臓器不全と診断した。原因不明の消化器症状を呈した場合には,サイトメガロウイルス胃腸炎を常に鑑別に挙げ,抗原だけではなくPCRや病理組織の提出が必須である。また,免疫不全状態ではない患者に発症する可能性を念頭に置くべきである。