Affiliation:
1. 八戸市立市民病院救命救急センター(Department of Emergency and Critical Care Medicine, Hachinohe City Hospital)
Abstract
要旨 症例は86歳の女性。心房細動に対してワルファリン内服後に血尿を呈して前医を受診し,ワルファリンによる凝固障害と急性腎障害と診断された。ワルファリン休薬後2日目に心窩部痛を主訴に当院に救急搬送された。当院搬入時も凝固障害があり,胆道内出血と厚生労働省急性膵炎重症度判定基準で予後因子3点以上かつ造影CT grade 2の重症急性膵炎を合併していた。ワルファリン拮抗薬としてメナテトレノン製剤20mgを使用した。急性膵炎に対して輸液,胆道ドレナージや抗菌薬投与を行い,急性腎障害に関しては腎代替療法を行った。くも膜下出血を合併したが,病状は安定し,第17病日に透析を離脱した。凝固障害の改善後の第33病日に腎生検を施行した結果,赤血球円柱による尿細管の閉塞,尿細管上皮細胞傷害の所見を認め,ワルファリン腎症と診断された。その後,第52病日にエドキサバンの内服を開始し,第67病日に胆道ドレーンを抜去し,第77病日にリハビリ目的に転院した。抗凝固薬内服中に凝固障害かつ腎機能障害を呈した場合には抗凝固薬関連腎症も考慮し,迅速な凝固障害の正常化と確定診断のために腎生検を考慮すべきである。