Affiliation:
1. さいたま赤十字病院高度救命救急センター(Altitude Emergency and Critical Care Medical, Saitama Red Cross Hospital)
Abstract
要旨 Clostridioides difficile Infection(CDI)は医療関連感染性下痢症の代表的な原因である。入院歴や抗菌薬の使用歴がないにも関わらず,CDIを発症するcommunity–associated CDI(CACDI)が近年増加傾向である。今回我々は,CACDIを合併した閉塞性大腸炎を救命できた1例を経験した。症例は80歳の男性。尿道狭窄による腎後性腎不全のため約7年前に内尿道切開術を施行した。以後当院泌尿器科で月に1回尿道留置カテーテル交換を実施。今回,2週間前から排便の停止あり。1週間前に当院外来を受診し糞便性腸閉塞の診断で浣腸を施行し,帰宅した。以後も腹部膨満感が持続,体動困難となり救急要請した。来院時意識障害と低血圧を認め,血液検査で炎症反応の上昇と急性腎障害,代謝性アシドーシスを認めた。CTで直腸の高度狭窄と糞便を認め,bacterial translocationに伴う敗血症性ショックの診断でICUに入院した。入院第2病日にCDトキシン陽性よりCDIと診断した。バンコマイシンの経胃投薬とメトロニダゾールの点滴投薬,腎代替療法,人工呼吸管理に伴い全身状態は改善した。第17病日にS状結腸人工肛門造設術を施行した。第26病日にICUを退出した。抗菌薬の使用や入院歴がない閉塞性大腸炎患者を診察するときはCACDIの併発も念頭に置いた診療を考慮すべきである。