鈍的腹部外傷を契機に肝膿瘍破裂を来した侵襲性肝膿瘍症候群の1例(Invasive liver abscess syndrome associated with ruptured liver abscess secondary to blunt abdominal trauma: a case report)

Author:

秀将 工藤1,翔太 前澤12,亮太 瀬尾2,岳史 寺田2,崇 入野田2

Affiliation:

1. 大崎市民病院救急科(Emergency Department, Osaki City Hospital)

2. 大崎市民病院救命救急センター(Emergency Department, Osaki City Hospital)

Abstract

要旨 鈍的腹部外傷を契機に肝膿瘍破裂を来した侵襲性肝膿瘍症候群の症例を経験した。症例は70歳代の男性で運転中の一過性意識障害により,事故を起こした。CT検査で肝S5深部からS6に造影剤血管外漏出像を伴う日本外傷学会肝損傷分類IIIb型の肝損傷と診断した。緊急動脈塞栓術を施行し止血を得たが,血液検査でCRP 20.68mg/dLと高値であった。第2病日に体温38.5℃の発熱を認め,感染症の合併を疑い,各種培養を採取し抗菌薬を開始した。第4病日に過粘稠性Klebsiella pneumoniaeが検出され,第5病日にCT検査を再検したところ肝S6に肝膿瘍を認めた。受傷後から右季肋部痛が出現し,後方視的に検討すると来院時のCT画像で肝膿瘍破裂の所見を認めたことから,肝膿瘍による敗血症が先行し鈍的腹部外傷を契機に肝膿瘍破裂を来したと判断した。第9病日に経皮的ドレナージ,第14病日に腹腔鏡下洗浄ドレナージを施行した。第23病日にCRP 17.0mg/dLと再上昇を認め,CT検査を再検したところ,胸腰椎移行部に傍椎体膿瘍を認め,侵襲性肝膿瘍症候群による転移性病変と考えた。肝膿瘍破裂は早期ドレナージが重要であり,鈍的肝損傷の診療において,炎症反応高値と非典型的な画像所見を認めた際には肝膿瘍破裂を疑い治療を進める必要がある。

Publisher

Wiley

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