Affiliation:
1. 筑波大学附属病院救急・集中治療科(Department of Emergency and Critical Care Medicine, University of Tsukuba Hospital)
Abstract
要旨Lemierre症候群は,咽頭炎または扁桃炎罹患後に菌血症および転移感染を伴う内頸静脈の敗血症性血栓性静脈炎を発症する疾患である。遠隔転移巣としては肺や関節が多く,中枢神経系合併症は報告されているものの頻度は稀である。今回我々は,肺に加えて中枢神経系にも合併症を認めた症例を経験したので報告する。症例は生来健康で基礎疾患のない24歳の男性。第1病日に発熱,咽頭痛を認め,第7病日に右扁桃周囲膿瘍が疑われ前医に緊急入院となった。第10病日に右内頸静脈内に血栓を認めLemierre症候群と診断され,第12病日に敗血症性肺塞栓症を認め当院へ転院した。血液培養でFusobacterium necrophorumが検出され,右扁桃周囲膿瘍の切開排膿,抗菌薬投与,抗凝固療法により経日的に自覚症状は改善した。しかし第33病日に実施した全身造影CTで新規に右後頭葉に脳膿瘍を認めた。抗菌薬治療の継続で病巣は消失し,後遺症を残すことなく第48病日に自宅退院した。本症例では有効な抗菌薬投与の遅れが重症化した原因の可能性がある。Lemierre症候群で脳膿瘍が合併することは稀だが,死亡例や重篤な後遺障害を生じることがあり,注意深い病変検索が重要である。
Reference12 articles.
1. 咽頭痛;宮里 悠佑;総合診療.,2019
2. Lemierre's syndrome: A systematic review
3. Lemierre 症候群の1例;内藤 亮;日呼吸会誌.,2011