Affiliation:
1. 兵庫医科大学病院救急災害医学講座(Department of Emergency and Disaster Medicine, Hyogo Medical University Hospital)
Abstract
要旨高トリグリセリド(triglyceride: TG)血症は,急性膵炎を引き起こすことがあり,標準治療とともに血清TG値を低下させることが重要である。今回,高TG血症に伴う急性膵炎を経験したので報告する。38歳の男性が前医を受診し,急性膵炎の診断で当施設へ転院となった。血液生化学検査では,白血球とCRP,アミラーゼの上昇,血清TG値4,432mg/dLと高値であり,CTでは膵頭部を中心とした膵腫大と膵周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。予後因子0点,CT grade 1で軽症急性膵炎と診断し,標準治療に加えて,インスリン・ヘパリン療法と脂質異常症治療薬の投与を開始した。第2病日に血清TG値1,179mg/dLまで低下したが,予後因子6点となり重症化した。そのため,high flow nasal cannulaと経腸栄養,持続的血液濾過透析を開始した。その後,血清TG値は低下し,腹痛などの臨床症状や臓器障害は改善,第22病日に退院となった。インスリン・ヘパリン療法は,膵炎を悪化させる要因であるTG値を低下させる治療の一助になると考えられた。