抄録
完全埋込型人工心臓のために体外から体内にエネルギーを伝達する手段は, 感染等の問題を考慮すると無線的に行うべきである。今回, 空芯コイルを用いた完全埋込型人工心臓用経皮無線電力伝送装置を試作し, その性能を分析した。結果は, 共振型の一次コイル駆動装置を用いて, 巻数30回の一次二次コイルにて25W以上の電力伝送が可能であった。効率は, DC to DGにて約78%であった。また, サーモグラフィーを用いた動物実験にて, コイルの温度は皮膚熱傷の起こる温度まで上昇しないことが確認できた。以上より, 空芯コイルを用いたことにより, 有芯コイルで問題となった皮膚熱傷の問題が解決でき, さらに伝送効率の向上も可能であった。コイルの生体適合性に関しては, エポキシ樹脂にてコーティングしたコイルを家兎皮下に約10ケ月埋め込んだ場合, コイル周辺に形成されたカプセルは薄く, 組織反応は軽度であった。