Affiliation:
1. 東京都立墨東病院高度救命救急センター(Tertiary Emergency Medical Center, Tokyo Metropolitan Bokutoh Hospital)
2. 東京消防庁(Tokyo Fire Department)
Abstract
要旨【目的】東京消防庁は2020年4月1日に指令センターへ口頭指導専従員を新規配置し,通報者への口頭指導体制を強化した。本研究はこの介入の効果を明らかにすることを目的に実施された。【方法】2018年1月1日から2022年12月31日までの東京消防庁ウツタイン統計に登録された院外心停止事案を対象に,分割時系列デザインを用いた観察研究を実施した。主要評価項目はバイスタンダーによる心肺蘇生実施割合とした。副次評価項目は口頭指導実施割合,バイスタンダーによる除細動実施割合,病院前自己心拍再開割合,1か月後生存割合,1か月後機能予後良好(脳機能カテゴリー 1または2)割合とした。【結果】64,000件(口頭指導専従員配置前:28,396件,口頭指導専従員配置後:35,604件)が解析対象となった。分割時系列デザイン解析の結果,口頭指導専従員配置によってバイスタンダー心肺蘇生実施割合は34.7%から44.4%へ9.6%(95%信頼区間:7.4%~11.9%)増加していた。一方で,病院前自己心拍再開割合,1か月後生存割合,1か月後機能予後良好割合に有意な変化はみられなかった。【結語】口頭指導専従員の配置によりバイスタンダー心肺蘇生実施割合が増加したが,患者転帰に有意な改善は認められなかった。今後はいかに患者予後を改善するかに焦点を当て,さらなる口頭指導体制の強化を行っていく必要がある。